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ピアノ七変化~内部奏法とプリペアド・ピアノ~

クラシック2011-06-09 12:43

火曜日、誘われて掲題のコンサートに行ってきた。サントリーホール内小ホール、ブルーローズ。当日券目当てだったのでちょい早めに着いたんだけど、入場待ちの列ができていて、注目度の高さがうかがえた。

この演奏会は、フェリスの学生さんが企画したものだそうで、TwitterやYouTubeを通して積極的に広報活動をされたのが功を奏したみたい。私のタイムラインにもAphex Twinのこの曲の動画が流れてきたので、見かけた方もいるのでは。

「プリペアド・ピアノ」とは、このとおり、ピアノの弦にいろいろな異物を挟んだり置いたりして、楽器本来の音色を、楽曲に応じてカスタマイズしてしまったピアノのこと。中に入れるのは、ネジだったりゴムだったり、はたまた布だったり、およそ音楽室のピアノで試したらこっぴどく叱られる類のもの。自分も、まったく予備知識がなくて、ましてやAphex Twinが"Drukqs"でこんな試みをしていることも知らなかったので、コンサートで彼の曲目が取り上げられること自体に、最初驚いてしまった。

ところが実際に聞いてみると、思っていた以上に楽曲ごとの個性があって、しかもどの音もコンサートホールに合った、機械っぽくも生音らしい響きで、すごく面白かった!特に前半の最後に演奏された、ケージの『孤島の娘たち』は、低音部にスネアのように聞こえる音があったり、全体的にパーカッシブで、ダンスミュージックのようなグルーヴがあった。

また、「内部奏法」は、文字通りピアノ内部の弦を演奏者が直接触ったり叩いたり、あるいは引っ掻いたりして音を出すこと。私は去年、フランチェスコ・トリスターノが自身の"Hello"という曲の冒頭で、内部奏法を取り入れていたのを見たのが初めて。ヘンリー・カウエルの『バンシー』では、着飾ったお姉さんが、ピアノに頭から突っ込んで一心不乱に弦を引っ掻いてるのがシュールだった!

普通にいい曲だったのが、ファジル・サイの『ブラック・アース』。これは本人が弾いている凄い映像があったので、見てみてください。始めと終わりで弦を手で押さえてミュートさせていて、リュートのような素朴な、悲しい感じの音になってる。中盤の、ジャズっぽいダイナミックなパートもいい。

ちなみにタンゴでは、内部奏法に近いことをよくやってますね。バンドネオンの側面や、コントラバスの裏を手で叩いたり、ヴァイオリンのブリッジの内側をギコギコ擦ったり。アコースティック楽器にノイズを積極的に取り入れるのって、もう全然違和感ないなぁ。

なんにせよ、プリペアド・ピアノを生で聴ける機会もそうそう無いようなので(ホールが許可してくれないことが多いらしい...そりゃそうだよね)、最後まで興味深く楽しむことができた。主宰や奏者の方の、こういう音楽にかける熱意や、もっと根源的な「好き」っていう純粋なパワーが伝わってきた。

レインボウ21 サントリーホール デビューコンサート2011
フェリス女学院大学プロデュース
ピアノ七変化~内部奏法とプリペアド・ピアノ~

2011年6月7日(火)19:00 サントリーホール ブルーローズ

ヘンリー・カウエル:エオリアン・ハープ
フレデリック・ショパン:練習曲 変イ長調 op.25-1「エオリアン・ハープ」
ヘンリー・カウエル:バンシー
ヘンリー・カウエル:マノノーンの潮流
ファジル・サイ:ブラック・アース
ジョン・ケージ:孤島の娘たち
(休憩)
カーティス・カーティス=スミス:5つの幻想的小品から 1.エコーズ 3.ノクターン
エイフェックス・ツイン:ジウェセック(アルバム『ドラックス』から)
三宅榛名:見慣れぬ夏の日に(委嘱初演)
ジョン・ケージ:バッカスの祭り
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